(追記)石川清さんは2022年6月にお亡くなりになられました。これまでの活動への感謝とともにご冥福をお祈りします。
プロフェショナル仕事の流儀で紹介された引きこもり支援の石川清さんを調べてみました。
前職はNHKの記者をしていたという石川清さん。
20年程前からひきこもり支援をスタートし、「どんなケースのひきこもりでもしっかりと個別対応すること」を信条としています。
石川清さんの活動内容
石川さんは長期のひきこもりでも暴力的な引き出し(強制的に家から連れ出すこと)や社会活動の強要などをせず、一人ひとり親身になって対応することで改善できるとおっしゃっています。
石川さんはひきこもりを脱出させる上でポイントは5つあるとし、、
①家離れをすること(具体的には、風呂なしの物件に住むのが良いとのことです)
②一生の友人を作ること
③異性との深い交流
④経済管理(正しいお金の使い方ができること)
⑤大人になるための通過儀礼(いろいろな人と向き合うこと・いろいろな体験をすること・自分一人で修羅場を乗り越えること)
引用:http://www.zenseikyo.or.jp/katsudo/chiiki/familia/post_108.html
上記の5つは石川さんが講演で語った内容からの抜粋になりますが、上記の5つを経験する中で3つの自立心を構築していくことがひきこもり脱出の最終目標としています。
身辺的自立…家事や公的な支払いなど身の回りのことをできるようになること
精神的自立…自分で考え行動し、困難を乗り越えることができるようになること
石川さんは現在の日本社会ではこれらをサポートする仕組みがまだまだ足りていないとし、自身が行っているひきこもり支援では上記の要素を満たす仕組み(システム)を本人の周りに作るよう心掛けているそうです。
石川清さんのひきこもり支援は具体的にどのようなもの?
石川さんのひきこもり支援は現在問題になっている強制的に家から連れ出して、どこかの施設に閉じ込めるというものではありません。
石川さんは講演活動や著書などで知っている人もいるとは思いますが、それ以外にもベースとなる活動が幾つかあるので紹介します。
訪問支援
石川さんが活動のベースにしているのが「対話」を目的とした訪問支援です。石川さんは年間に800件もの家庭を訪問します。
ひきこもりに陥る原因はさまざまで、いじめ、不登校、病気、就職活動失敗などが主に挙げられます。どれも対話できる相手がいればひきこもりにならずに済んだかも知れません。
父親が強権的で親子関係がうまく行かずひきこもりになるケースなども多く、石川さんが対話する相手はひきこもり本人だけでは無く親御さんも対象となります。
家族教室
毎月1度行われる集会で対象は本人ではなく家族です。
- 参加費は一家族1,000円
- 予約不要で誰でも参加可
石川さんは家族がひきこもっている本人とどのように向き合うかで改善するかどうかを大きく左右すると言います。
身近にいる家族などは、元気になってほしいし、ひきこもっていたづらに時間が経過して欲しくないし、ということで、かえって焦って叱咤激励して、さらに当事者を追いつめてしまうこともあります。家の中からどんどん安心感が消えていって、ひきこもり状態が強まったり、悪化する悪循環ですね。
引用:http://blog.livedoor.jp/cvnasaka/archives/20471884.html
家族教室ではこのような問題を抱えている前提でどのようにしたら状況を改善できるか、本人と向き合うかを講義します。
個別面談
家族教室と同じ日程で家族や本人との面談も行っています。これは家庭訪問ではなく面談場所に言って行うものです。場所は開催地域の市民センターが主です。
- 要予約
- 50分3,000円
もちろん貯金、年金や生活保護などの財政的な問題にも様々なケースに合わせて対応していきます。
石川さんは状況の整理も大切だと言っています。
多くの家族や当事者はすでに複数の(多いときは50箇所以上の)医療機関や支援団体、福祉団体などにすでに相談していたりします。それゆえに、様々な助言を受けすぎて、中には相いれないアドバイスを同時に実行に移そうとしているご家族などもいます。その場合、僕の支援方針はひとまずおいておいて、その家族がバランスを取り戻すように整理することも必要だったりします。
引用:http://blog.livedoor.jp/cvnasaka/archives/8512203.html
旅行療法
本人を日常のプレッシャーから開放し、全く違った世界に住む人達との交流の中でこれまでの価値観に囚われない関係性を築けると言います。
本人がひきこもりになる大きな原因の一つに日常の閉鎖的な人間関係によるプレッシャーがあるとし、旅行(特に海外旅行)はこれまでの環境で出来上がった考えかたを変えるのに最適だそうです。
ただもちろん闇雲に旅をすれば良いわけでは無く、何を目標にして旅をするかは個人によって変わるので石川さんとの面談で旅行プランのがおすすめです。
実際にどんな人がひきこもりを脱しているの?
石川さんのところには軽度のひきこもりだけでなく重度のひきこもり相談も多く、暖かく見守りながら外に出ることを強制しない支援をし続けることで少しづつ改善していきます。
50歳からの一般就労
ここのところ、30年ほどひきこもり状態にあったアラフィフの当事者が、数人パート、アルバイトを始めました。一般の仕事なので、バイトでも例えば早朝にやっている人は時給1300〜1500円となります。
30年のブランクは、もはやブランクではなく、人生の仕切り直しです。
決して楽ではないのですが、今のところ、ゆるいペースで続いています。
引用:http://blog.livedoor.jp/cvnasaka/archives/20683463.html
もちろん全てのひきこもりがすぐに改善するわけではなく、3歩進んで2歩下がるようなペースで支援を行うのがほとんどです。
他のひきこもり支援の実例はプライバシーの問題もあるのでここでは書けませんが、事例は講演や家族教室、著書などでも紹介されています。
●石川さんの著書『ドキュメント・長期ひきこもりの現場から』
年間訪問件数800件の経験から語られるひきこもりの実態はとてもリアルです。
この本で出てくるひきこもり当事者のほとんどが10年以上の長期に渡っているケースで、石川さんがそんな重度のひきこもりの子たちとどのように向き合っているかが書かれています。
2017年の著書なので情報も新しく参考になる点は多いです。
まとめ
石川さんはジャーナリストでもとNHKの記者という経歴を持っています。
ひきこもりを取材したことがひきこもり支援を始めるキッカケということでそれからはひきこもり支援が主な活動になっているとのこと。
石川さんはとにかく粘り強く訪問し続けて本人との信頼関係を築き上げる人です。
その際も無理やりドアをこじ開けるようなことは絶対にせず、家族の相談にのった上で本人には軽く自分の存在を知らせるだけで済ませます。これは繰り返すことで本人に人慣れさせることが目的です。
このように細心の注意を払いながらひきこもり支援を行い続ける石川清さん。
年間800回、一日に3件以上のひきこもり家庭に足を運び続けるその熱意は尋常ではありません。
これからさらにひきこもりは増えるという試算もあるなか、このような活動を先陣を切って行う石川さんは素晴らしい人ですね。
今回はそんなひきこもり支援のプロフェッショナル石川清さんを紹介しました。ありがとうございました。
石川さんのひきこもり支援に関する情報は公式ブログで知ることが出来ます。