最近のディズニー映画やマーベル映画はポリコレがひどいと言われてはや数年。
原作のキャラクターの人種を変更することを「カラー・ブラインド・キャスティング」といって、これは白人が少ない国では当たり前の事です。
しかし白人俳優をキャスティングできるのにも関わらず、あえて黒人俳優を起用することは「ブラックウォッシング」と揶揄されています。
一説によるとディズニーのポリコレに配慮された作品は売上的に大赤字、大爆死しているという話もあります。
例えば2022年に公開された『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』は1億9,740万ドルの赤字を出したと報告されています。
ただここまで赤字が出るほどかと言われると、やはり前評判の段階でかなりの足かせを背負っているように感じます。
そこで今回はディズニーの近年の作品で特にポリコレに配慮された作品をまとめます。
実際にどんな作品があり、どの程度売上が立っているのか?
評価はどの程度なのかを見てみましょう。
作品は古いもの順に紹介します。
プリンセスと魔法のキス(2009)
2009年に製作されたディズニーのセルアニメ映画。
原作は2002年に発表された作家E.D.ベイカーのジュブナイル小説『カエルになったお姫様』
アメリカのニューオリンズを舞台に夢を追いかけるひたむきな少女とカエルに変えられてしまった王子様のラブロマンス。
こちらの作品は主人公のお姫様を黒人に変えたことでポリコレに配慮した作品になります。
ポリコレ批判にも晒されずに評価は非常に高く、製作費1億ドルで世界興行収入2.6億ドル。
CG全盛の時代にセルアニメでこれなら十分成功と言えるでしょう。
美女と野獣(2017)
2017年に公開された実写映画『美女と野獣』
エマ・ワトソンが主役を演じて大好評だった作品ですね。
こちらの作品、ル・フウがガストンに恋する同性愛者という設定が脚本に付け足されたのは意外と知られてないかもしれません。
ル・フウはガストンについて回るお調子者の子分。
男性の同性愛者としてはディズニー史上初の記念すべきキャラクターとも言われています。
全世界での興行収入は上々で12.66億ドルと2017年の興行収入トップでした。
アナと雪の女王2(2019)
世界的に大ヒットした作品『アナと雪の女王』の続編。
元々エルサは最強でしたが、2では最強ぶりに更に磨きがかかり完全に人間を辞めたと言われています。
まあ実際エルサは妖精だったんですけどね。
ポリコレ的な配慮はやはりクリストフの頼りなさが挙げられるようです。
とはいえ元々アナ雪はアナとエルサが活躍する話なんで別にこれは良いんじゃないかなとも感じます。
作品としての評価は前作と同じ星3.7。
相変わらず面白いという評価から、蛇足という評価まで様々です。
総製作費は1.5億ドルで世界興行収入は14.53億ドル。
ミラベルと魔法だらけの家(2021)
南米コロンビアを舞台にした魔法使いの一族の絆の物語。
この映画はそれまでのディズニー作品にはないデザインや多様性を意識したストーリーが、評論家には高く評価された作品になります。
製作費は1.5億ドル、世界興行収入は2.56億ドルで成功とみなされています。
バズ・ライトイヤー(2022)
2022年に上映されたSF冒険作品『バズ・ライトイヤー』
同性のキスシーンが原因で中国を含む14カ国で上映禁止になったことでも話題になりました。
この作品は私も見ましたがバズが単身奮闘する姿や途中から仲間とともに問題に立ち向かっていくストーリーは十分楽しめました。
前述したシーンについてもほんの一瞬だったのでそこまで気になりませんでした。
作品の評価としては星3.4。
トイ・ストーリー4よりは面白かったという評価です。
製作費は約2億ドル、世界興行収入は2.26億ドルで宣伝広告費を入れれば爆死といえます。
ピノキオ(2022)
こちらの『ピノキオ』は2022年に上映された実写映画になります。
ブルーフェアリー役が黒人女性になったことでも話題になりました。
ブルーフェアリーを演じたシンシア・エリヴォは圧倒的な歌唱力で作品を盛り上げてくれています。
これも多様性を意識したキャスティングとのことですが作品自体は星3.3でまあまあの評価。
よく言われているのが登場人物は実写なのにピノキオはアニメのままのデザインでCG化されているので違和感を覚えたというもの。
映画『名探偵ピカチュウ』ばりに振り切れていればよかったのですが、そうはなりませんでした。
製作費は1.5億ドル、興行収入はディズニープラスでの配信につき劇場公開はなく非公表です。
ストレンジ・ワールド(2022)
こちらは2022年に公開された映画『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』
ウォルト・ディズニーカンパニー創立100周年記念作品としては作られた本作。
豊かな国「アヴァロニア」に住む青年が国を救うため不思議な世界を旅する冒険映画です。
こちらの作品も多様性を重視し、主人公は白人で妻は黒人女性、息子はハーフの同性愛者、愛犬は片足がなく、国のトップはアジア系の女性と隙のない構成です。
作品としての評価は星2.9と少し見るのに勇気がいる数値。
ディズニー作品なのにイケメン・美女が一人もいないのが気になったという声もありました。
私も作品を視聴しましたが内容は王道もので展開自体はまあまあ楽しめました。
ただどうしてもポリコレに慣れてない人は意識がそっちに持っていかれるかもしれません。
そのぐらい多様性を意識した作品に仕上がっています。
製作費は1.8億ドル、世界興行収入は0.73億ドルで大赤字でした。
ピーターパン&ウェンディ(2023)
ピーターパン&ウェンディは2023年4月に公開された実写映画です。
今作のポリコレ要素は妖精ティンカーベルを黒人俳優のヤラ・シャヒディさんが演じていることと、原作では男の子だけのロストボーイズに女性の役者さんが起用されたことです。
他にもウェンディが剣を持って戦うなどの改変がありますが実際見てみると、新しいピーターパンとしてなら星3ぐらいの面白さです。
ネットの評価は星2.1と厳しい評価になっています。
こちらはディズニープラス独占配信となっており、製作費や興行収入は分かりません。
リトル・マーメイド(2023)
リトル・マーメイドは2023年に公開された実写映画です。
主人公のアリエルを黒人歌手のハリー・ベイリーが演じたことでも話題になりました。
ハリー・ベイリーは元は女性R&Bデュオのクロイ&ハリーの一人です。
歌唱力に定評があり、リトル・マーメイドでもその類まれなる歌唱力を見込まれ起用されました。
作品の評価は前評判を覆す出来で意外と悪くないという声も多く聞こえてきました。
興行収入はまだ出ていないので発表が待たれます。
(追記)リトル・マーメイドの情報が出てきましたね。総製作費2.5億ドル、興行収入2.1億ドルだそうです。興行収入はまだ伸びるので今後も注目ですね。
なぜ過度なポリコレは批判されるのか?
ネット上で過熱しているポリコレ批判の理由についても書いておきます。
基本的にポリコレを批判する人達の言い分はこの一点に集約されます。
「とにかく原作のイメージを壊さず映画を作って欲しい」
この一点のようです。
つまり原作のキャラクターに雰囲気も色も何もかもできる限り寄せて欲しいんですね。
例えばアラジンはアラブ系で作れば誰も文句は言わないとのこと。
実際アラジンはエジプト人の両親をもつメナ・マスードが演じて世界中から高く評価されました。
また仮に原作通りの肌の色でも原作イメージから余りにもかけ離れた俳優ならば同じく批判の的にされるのではないかとも言います。
これがポリコレ批判をしている人たちの主張です。
決して人種差別をしている訳ではないという考えのようです。
ディズニー映画におけるポリコレ賛成派の意見
一方だけの意見ではフェアではないのでディズニー映画におけるポリコレ賛成派の主張も見ていきましょう。
ポリティカル・コレクトネスとは直訳すると「政治的な正しさ」になります。
これまで、見た目や性別などのルーツで正当に評価されなかった社会を変えるために1980年代にアメリカの大学で広まった思想です。
例えば「看護婦」が「看護師」、「保母さん」が「保育士」と呼ばれるようになったのもポリコレのおかげなんですね。
映画にポリコレが取り入れられるようになったのはつい最近の事です。
ポリコレ推進派としてはディズニーやマーベルなどの影響力の大きい企業が差別と真っ向から戦ってくれることに大賛成のようです。
ただ推進派の中には余りにも強引な原作改変は望まない、匂わせるぐらいで丁度良いとする層もいます。
こうして見てみるとポリコレを推している人達も一枚岩で無いことが分かります。
ポリコレは一定の成果を上げていることは間違いありません。
ただやり方が強引と批判されることも少なくないので正に一長一短です。
ポリコレ賛成派も反対派も笑顔になれる丁度いい塩梅を探ることが今後の課題になりそうですね。
まとめ
結局赤字額の合計は未発表のものもあり分かりませんでした。
赤字が出た作品は『バズ・ライトイヤー』と『ストレンジ・ワールド』の2作品でした。
ただ昨今のディズニーは動画配信サービス「Disney+」が重しとなり2023年2月には7000人の人員削減を発表しました。
この原因がポリコレとは言いませんがお金の無くなったディズニーがこれから先どのような作品を作るのかは注目です。
基本的に私は差別は絶対に反対ですし、ポリコレもある程度であれば全く構わないという考えです。
やはり大切なのは「程度」なんですよね。
この辺を上手く調整して作品が作られるようになるかはまだ分かりません。
この流れは強まることはあっても弱まることは無いように思えます。
色んな意味でこれからのディズニー作品にも注目が集まることは間違いないでしょう。